ファイザー、片頭痛治療薬「ナルティークOD錠」を発売― 既存治療との違いとレッドオーシャンを生き抜く戦略 ―

ファイザー、片頭痛治療薬「ナルティークOD錠」を発売
― 既存治療との違いとレッドオーシャンを生き抜く戦略 ―

2025年12月、ファイザー株式会社は新たな片頭痛治療薬 「ナルティークOD錠75mg(一般名:リメゲパント硫酸塩水和物)」 を国内で発売しました。

本剤は、日本で初めて「片頭痛発作の急性期治療」と「発症抑制(予防)」の両方に適応を持つ経口CGRP受容体拮抗薬です。 片頭痛治療が成熟期に入った今、この薬剤がどのようなポジションを狙っているのか、 そしてMR・脳神経内科領域でどう向き合うべきかを整理します。


片頭痛治療薬市場はなぜ「レッドオーシャン」なのか

片頭痛は日本国内で推定800万人以上が罹患するとされ、 特に就労世代に多い疾患です。 治療薬はすでに以下のように出揃っています。

  • トリプタン系薬(急性期治療の第一選択)
  • ジタン系薬(血管収縮作用を持たない急性期治療薬)
  • CGRP関連抗体製剤(予防目的、注射製剤)

治療オプションは豊富である一方、 「効果が不十分」「副作用」「投与形態が合わない」 といった理由で、患者満足度は決して高いとは言えません。

ナルティークOD錠は、この“隙間”を狙ったプロダクトと位置づけられます。


ナルティークOD錠とは?【添付文書ベース解説】

■ 基本情報

  • 一般名:リメゲパント硫酸塩水和物
  • 薬効分類:CGRP受容体拮抗薬
  • 剤形:口腔内崩壊錠(OD錠)

■ 効能・効果

  • 片頭痛発作の急性期治療
  • 片頭痛発症の抑制(予防)

■ 用法・用量

  • 急性期治療:片頭痛発作時に75mgを1回経口投与
  • 予防:75mgを1日おきに経口投与

1剤で「発作時」と「予防」の両方に使える点は、 既存治療にはなかった大きな特徴です。


既存治療との違いをどう説明するか

治療カテゴリー主な特徴課題
トリプタン系高い即効性血管収縮作用、使用制限
ジタン系血管作用なし中枢神経系副作用
CGRP抗体製剤予防効果が高い注射製剤、通院負担
ナルティークOD錠急性期+予防を内服で対応効果発現に個人差

MRとして重要なのは、 「どの薬が優れているか」ではなく、「どの患者に合うか」 を明確に伝えることです。


臨床エビデンスの考え方(過度に盛らない)

国内外の臨床試験では、 ナルティークは急性期治療において 服用後2時間時点での頭痛消失率がプラセボに対して有意に高い ことが示されています。

一方で、全例に著効する薬剤ではなく、 効果不十分例が存在することも事実です。 予防効果についても、抗CGRP抗体製剤と同等の強さを期待する薬剤ではありません。

この「万能ではない」という前提を共有できるMRは、 むしろ医師からの信頼を得やすくなります。


脳神経内科・頭痛外来での実践的ポジション

ナルティークOD錠が検討されやすい患者像は以下です。

  • トリプタンが効かない、または使いにくい患者
  • 注射製剤に抵抗がある患者
  • 急性期と予防の切り替えが煩雑な患者

特に頭痛専門外来・脳神経内科クリニックでは、 患者のQOL改善を重視した処方提案が鍵になります。


MR視点:レッドオーシャンを生き抜く戦略

  • 「注射 vs 内服」という単純比較にしない
  • 患者背景(生活・仕事)を軸にした提案
  • 長期処方設計の中での位置づけ説明

片頭痛領域では、 疾患理解 × 患者視点 × 薬剤特性 を語れるMRが生き残ります。


転職・キャリア戦略としての片頭痛領域

片頭痛・CGRP関連領域は、 今後も新薬・適応拡大が見込まれる注目分野です。

この領域での経験は、 脳神経内科/神経免疫/希少疾患領域へのキャリア展開 にも直結します。

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まとめ

ナルティークOD錠は、 「片頭痛治療の選択肢を広げる薬」であり、 「レッドオーシャンの中で差別化を迫られる製品」でもあります。

だからこそ、MRには 誇張しない説明力と、患者起点の提案力 が求められます。

片頭痛領域は、知れば知るほど奥が深く、 MRとしての市場価値を高められる分野です。


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