ノバルティス2025年第三四半期決算を徹底解説!成長製品、開発パイプライン、株価予測まで
ノバルティス2025年第三四半期決算を徹底解説!
成長製品、開発パイプライン、そして株価の行方は?
世界第3位のメガファーマ・ノバルティス。2025年第3四半期決算では、ジェネリック圧力をものともせず、成長製品群が躍動しました。 この記事では、決算数字を読み解くだけでなく、「なぜノバルティスはここまで強いのか?」という企業ストーリーにも踏み込みます。
1.決算サマリー:Kisqali・Kesimptaが圧倒的成長!
ノバルティスの2025年第3四半期(7〜9月)は、売上・利益ともに市場予想を上回る堅実な着地でした。
| 項目 | 2024年Q3 | 2025年Q3 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 128億ドル | 139億ドル | +8% |
| コア営業利益 | 51億ドル | 55億ドル | +7% |
| コアEPS | 2.06ドル | 2.25ドル | +9% |
決算のハイライトは明確です。 主力のがん治療薬「Kisqali(キスカリ)」と多発性硬化症治療薬「Kesimpta(ケシンプタ)」が驚異的な伸びを示しました。 この2製品だけで前年同期比+50%を超える成長。旧来の大型品に依存していた時代は、完全に終わりを告げています。
2.四半期推移で見るノバルティスの安定感
過去1年間の四半期ごとの推移をみると、ノバルティスの成長が「一過性ではない」ことが分かります。
| 期 | 売上高(百万$) | 主なトピック |
|---|---|---|
| 2024 Q4 | 13,153 | Kisqali・Kesimptaの市場浸透拡大 |
| 2025 Q1 | 13,233 | Entresto特許切れ対策を加速 |
| 2025 Q2 | 14,054 | 放射線リガンド療法が新成長軸に |
| 2025 Q3 | 13,909 | 成長製品がジェネリック影響を相殺 |
連続して13〜14億ドル台を維持しながら利益率を高水準で確保。 これは単に「新薬が当たった」だけではなく、同社のグローバルオペレーション力の高さを示す結果です。
3.成長製品の勢い:新たな“4本柱”が確立
2025年Q3時点で、ノバルティスの成長を支える4本柱は以下の通りです。
- Kisqali(乳がん):売上13.3億ドル(+68%)。早期乳がん適応が欧米で急拡大。
- Kesimpta(多発性硬化症):売上12.2億ドル(+44%)。自己投与可能な利便性が支持を集める。
- Pluvicto(前立腺がん):売上5.6億ドル(+45%)。放射線リガンド療法(RLT)の代表格として世界需要が急増。
- Scemblix(CML):売上3.6億ドル(+95%)。次世代TKIとして臨床現場から高評価。
特筆すべきは、これらがすべて「バイオ×分子標的×自己投与型」のハイブリッド型新薬であること。 ノバルティスは確実に「次世代製薬の教科書」を書き換えています。
4.開発パイプライン:免疫・希少疾患・RLTが躍進中
決算資料で注目を集めたのは、開発段階にある複数の有望アセットです。
- Rhapsido(口腔BTK阻害薬):慢性蕁麻疹でFDA承認取得。アレルギー治療の新時代を切り拓く可能性。
- Ianalumab(B細胞標的):シェーグレン症候群でP3試験良好。希少疾患分野での存在感が増大。
- Fabhalta(補体系阻害薬):IgA腎症やPNHでP3成功。免疫×腎疾患の橋渡し的存在。
- 新RLT・ADCライン:Pluvicto後継を狙う放射線リガンド・抗体薬物複合体が複数開発中。
ノバルティスはもはや「スイスの老舗」ではなく、AI創薬・放射線・遺伝子編集などの最先端を牽引する“テック・ファーマ”企業に進化しています。
5.株価・投資視点で見るノバルティス
株式市場では、ノバルティスを「安定収益+中期成長シナリオ」を両立する“バランス型銘柄”と評価する声が増えています。
- 成長ドライバー:Kisqali・Kesimpta・RLTの3本柱が二桁成長。
- 収益基盤:Entresto・Cosentyxなど旧主力がなお堅調。
- 懸念要素:米国でのジェネリック競合と薬価改定の影響。
- ポジティブ材料:通期ガイダンスの再確認、研究開発費効率化による営業利益率改善。
専門アナリストの見通しでは、今後12ヶ月の株価レンジは110〜125CHF前後。 高配当(配当利回り3.5%)と安定成長が両立する数少ない欧州メガファーマとして位置づけられています。
6.MR・製薬人材のキャリア的視点
ノバルティスの決算を読み解くと、製薬MRやマーケティング人材にとってのヒントが見えてきます。
- 自己投与型製品の普及により、MRの役割は「説明」から「体験提案」へ。
- 免疫・神経・がん・希少疾患の複合領域で、スペシャリティ知識の深さが問われる。
- デジタルリテラシーを備えたMRやKAMが、今後の主戦力となる。
製薬業界全体で「専門人材×多職能キャリア」への転換が進む中、 今のうちにキャリアの棚卸しをしておくことが、将来の年収とポジションを大きく左右します。
7.まとめ:ノバルティスの未来は“静かな革新”
派手さよりも、確実に成果を積み上げていく――それがノバルティスの流儀です。
旧来製品に依存しない新たな利益構造を築き上げ、研究開発から供給体制までを最適化。 「革新」と「安定」を両立できる製薬企業は、世界でも多くありません。
この堅実さと先進性のバランスこそ、ノバルティスというブランドの最大の強みです。
出典:ノバルティス 2025年第3四半期決算発表資料および決算説明会コメントを基に再構成。


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