アストラゼネカは「踊り場」を抜けるのか?──2027年以降の成長再加速と日本市場の次世代戦略を読む

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アストラゼネカは「踊り場」を抜けるのか?──2027年以降の成長再加速と日本市場の次世代戦略を読む

ジェイエイシーリクルートメント

アストラゼネカ日本法人が、2027年以降の成長再加速に向けて大きく舵を切ろうとしています。

2025年の国内業績はほぼ横ばい。タグリッソ、フォシーガ、イミフィンジという巨大製品群を抱えながらも、薬価再算定、後発品参入、競争激化といった逆風に直面しています。

しかし、今回のアンドリュー・バーネット新社長の発言から見えてくるのは、単なる守りの経営ではありません。

むしろアストラゼネカは、2026年を「移行期」と位置付け、2027年以降に複数の新薬・適応拡大を投入することで、再び成長軌道へ戻ろうとしています。

この記事のポイント

  • アストラゼネカは2025年に売上横ばいとなり「踊り場」に入った
  • 主力3製品は依然として強いが、フォシーガ後発品参入とイミフィンジ薬価再算定が重荷
  • 2026年は成長再加速前の移行期
  • 2027年以降は新薬投入と適応拡大で再成長を狙う
  • 2030年までに日本で50件の承認取得を目指す大型パイプラインが最大の武器

アストラゼネカの現在地:2025年は「踊り場」の1年

アストラゼネカの2025年国内売上は、IQVIAの薬価ベースで前年比0.1%減の5,134億円。決算公告ベースでも0.6%減の4,198億円となり、全体としてはほぼ横ばいの着地となりました。

ここ数年のアストラゼネカは、がん、循環器・腎・代謝、呼吸器・免疫といった複数領域で強力な製品を展開し、日本市場でも存在感を高めてきました。

特に大きいのが、以下の3製品です。

タグリッソ

2025年売上:1,137億円

肺がん領域を支える主力製品。発売から10年を迎えつつも、堅調な成長を維持。

フォシーガ

2025年売上:1,082億円

糖尿病、慢性心不全、慢性腎臓病で価値を広げてきた大型製品。

イミフィンジ

2025年売上:1,020億円

がん免疫療法薬として大型化した一方、薬価再算定の影響を受けた。

この3製品だけで合計3,239億円。全社売上の6割以上を占めています。

つまり、アストラゼネカは日本市場で極めて強い製品ポートフォリオを持つ一方で、主力品への依存度も高い構造になっています。

なぜ成長が鈍化したのか:フォシーガとイミフィンジにかかる逆風

フォシーガ:後発品参入による市場浸食リスク

最大の注目点はフォシーガです。

フォシーガはSGLT2阻害薬として、糖尿病だけでなく、慢性心不全や慢性腎臓病でも重要なポジションを築いてきました。単なる糖尿病薬から、心腎代謝領域の基幹薬へと進化した製品です。

しかし、2025年12月に後発医薬品が参入しました。適応は2型糖尿病のみの、いわゆる「虫食い」参入ですが、実際の市場では一定の浸食が避けられない可能性があります。

ポイント:
慢性心不全・慢性腎臓病の適応が後発品にないとしても、処方現場では薬価差や採用状況が影響し、想定以上に市場が動く可能性があります。

さらに、小野薬品との販売提携も終了し、アストラゼネカ単独での販売・販促活動へ切り替わりました。

これは一見するとリスクにも見えますが、別の見方をすれば、アストラゼネカがフォシーガの価値最大化を自社主導で進めるフェーズに入ったとも言えます。

イミフィンジ:薬価再算定が成長のブレーキに

イミフィンジは、2025年売上1,020億円と依然として巨大製品です。

ただし、前年からは6.0%減少しました。その背景には、免疫チェックポイント阻害薬市場の競争激化だけでなく、薬価再算定の影響があります。

2024年には特例拡大再算定、用法用量変化再算定を受け、薬価引き下げが売上に影響しました。

薬剤としての使用量が維持・拡大していても、薬価が引き下げられれば売上金額は伸びにくくなります。

これは日本市場で大型化した薬剤が必ず直面する構造的な問題です。

2026年は「移行期」:守りながら次の成長を待つフェーズ

アストラゼネカは2026年について、大きな成長を見込むというよりも、新製品が本格的に寄与するまでの「移行期」と位置付けています。

このフェーズで重要になるのは、既存製品の価値最大化と、成長領域での売上補完です。

呼吸器・免疫領域が成長の下支えに

呼吸器・免疫領域では、テゼスパイアやファセンラが伸長しています。

特に喘息治療の領域では、バイオ製剤の使い分けや適応拡大が進み、今後も専門性の高いMR活動が求められる領域です。

製品そのものの差別化だけでなく、どの患者像にどの薬剤を提案するのか、医師の治療戦略にどこまで踏み込めるかが重要になります。

既存大型品のライフサイクルマネジメント

アストラゼネカの強さは、単に新薬を出すことだけではありません。

既存の大型製品を、適応拡大やエビデンス追加によって長く成長させる力にあります。

  • フォシーガ:慢性心不全・慢性腎臓病領域でさらなる価値最大化
  • タグリッソ:複数の適応症で試験進行中
  • イミフィンジ:市場拡大と薬価制度変更後の再成長を狙う
  • ビレーズトリ:気管支喘息への適応拡大を申請中

特にフォシーガは、後発品参入という逆風がある一方で、心不全・CKD領域での価値をどこまで守れるかが重要です。

2027年以降が本番:アストラゼネカは再び成長できるのか

今回の会見で最も重要なのは、アストラゼネカが2027年以降に本格的な成長再加速を見込んでいる点です。

グローバルでは2030年までに20の新薬を発売する計画を掲げており、日本でも複数の製品がブロックバスターになる可能性が示されています。

2027年以降のアストラゼネカは、

「フォシーガ・タグリッソ・イミフィンジで守る会社」から、
「次世代パイプラインで再成長する会社」へ変わろうとしています。

注目候補①:バクスドロスタット

バクスドロスタットは、治療抵抗性高血圧症の治療薬候補として注目されています。

高血圧は患者数が非常に多い一方で、治療抵抗性高血圧というアンメットニーズは依然として大きい領域です。

もし既存治療で十分に管理できない患者に対して新たな選択肢となれば、市場インパクトは大きくなる可能性があります。

注目候補②:トゾラキマブ

トゾラキマブは、COPDや重症ウイルス性下気道疾患などで期待される薬剤候補です。

アストラゼネカはもともと呼吸器領域に強みを持つ企業です。既存の呼吸器製品群と新薬候補が組み合わされば、同社の呼吸器フランチャイズはさらに厚みを増す可能性があります。

最大の武器は国内最大級のパイプライン

アストラゼネカの次世代戦略を語るうえで、最大の武器はパイプラインです。

国内ではアレクシオンファーマを含め、167の試験を実施中。さらに2030年までに、新規有効成分と適応追加を合わせて50の承認取得を目指しています。

項目内容
国内試験数167試験
2030年までの承認目標50件
2025年承認取得6件
2026年承認取得済み2件
審査中5件

1年前は2030年までに40件の承認を見込んでいましたが、現在は50件へ上方修正されています。

これは、単なる希望的観測ではなく、実際にパイプラインが前進していることを示す重要なメッセージです。

アレクシオンとの組み合わせも重要

アストラゼネカを考えるうえで忘れてはいけないのが、アレクシオンファーマの存在です。

アレクシオンは希少疾患領域に強みを持つ企業であり、アストラゼネカ本体のオンコロジー、呼吸器、循環器・腎・代謝領域とは異なる専門性を持っています。

両社を合わせることで、アストラゼネカグループは日本市場において非常に広い治療領域をカバーすることになります。

特に今後の医薬品市場では、単に患者数の多い領域だけでなく、希少疾患や高付加価値領域での専門性がますます重要になります。

その意味で、アストラゼネカとアレクシオンの組み合わせは、2030年に向けた競争力の源泉になり得ます。

MR視点で見るアストラゼネカ:今後のキャリアチャンスはあるのか

MR目線で見ると、アストラゼネカは非常に興味深い局面にあります。

現在は、フォシーガの後発品参入、イミフィンジの薬価影響など、決して楽なフェーズではありません。

しかし、だからこそMRとしての実力差が出やすい時期でもあります。

守りの製品で成果を出せるMRは強い

フォシーガのように後発品が入った製品では、単純な製品力だけで押し切ることは難しくなります。

医師に対して、薬剤の適応、患者像、エビデンス、診療科連携、地域医療の流れまで含めて提案できるMRが求められます。

つまり、単なる情報提供ではなく、治療戦略の中で製品価値を再定義する力が必要になります。

新薬上市フェーズはMRにとって最大の成長機会

一方で、2027年以降に新薬が本格投入されるなら、MRにとっては大きなチャンスです。

新薬上市のタイミングでは、以下のような経験を積むことができます。

  • 新市場の立ち上げ
  • KOLマネジメント
  • 講演会設計
  • 院内採用活動
  • 競合品との差別化戦略
  • エリア戦略の構築

これらは、MRとしての市場価値を大きく高める経験です。

特にバイオベンチャーや希少疾患、オンコロジー、スペシャリティ領域への転職を考えるMRにとって、新薬上市経験は強力な武器になります。

アストラゼネカは「守りながら、次で勝つ会社」へ

今回のアストラゼネカの戦略を一言でまとめるなら、こうです。

アストラゼネカは、
「守りながら、次で勝つ会社」になろうとしている。

2025年から2026年にかけては、フォシーガ後発品参入、イミフィンジの薬価影響、主力品の成熟化という課題に対応する必要があります。

一方で、2027年以降は新薬投入、適応拡大、国内最大級のパイプラインを武器に、再び成長を加速させるシナリオが見えています。

この構図は、製薬企業としては非常に現実的です。

永遠に伸び続ける製品はありません。大型品はいずれ成熟し、薬価改定や後発品参入の影響を受けます。

重要なのは、その次の成長エンジンをどれだけ早く、どれだけ多く準備できているかです。

その点で、アストラゼネカは非常に強いカードを持っています。

まとめ:2027年以降のアストラゼネカは要注目

アストラゼネカは今、分かりやすい成長期ではなく、次の成長に向けた移行期にいます。

しかし、この移行期をどう乗り越えるかによって、2030年時点の日本市場でのポジションは大きく変わります。

既存大型品を守りながら、新薬・適応拡大・パイプラインで次の柱を作る。

この戦略が成功すれば、アストラゼネカは日本市場で引き続きトップクラスの存在感を維持するでしょう。

MR・製薬業界関係者が見るべきポイント

  • フォシーガの後発品影響がどこまで広がるか
  • イミフィンジが薬価影響を乗り越え再成長できるか
  • 呼吸器・免疫領域がどこまで売上を補完できるか
  • 2027年以降の新薬上市が日本でどの程度インパクトを持つか
  • 2030年までの50承認計画がどこまで実現するか

MRのキャリア視点でも、アストラゼネカは引き続き注目すべき企業です。

成熟品を守る力、新薬を立ち上げる力、専門領域で医師と深く議論する力。

そのすべてが求められる環境だからこそ、製薬業界でキャリアを伸ばしたいMRにとって、アストラゼネカの今後の動きは見逃せません。


製薬業界でキャリアを広げたいMRへ

近年の製薬業界では、大型品の成熟、薬価改定、後発品参入、組織再編が当たり前になっています。

その一方で、オンコロジー、希少疾患、免疫、呼吸器、腎・代謝領域では、新薬上市や専門MRのニーズが高まり続けています。

今後のキャリアを考えるうえでは、現在の会社に残るかどうかだけではなく、

  • 自分の経験が市場でどう評価されるのか
  • 次に伸びる領域はどこか
  • 新薬上市やスペシャリティ領域に挑戦できる可能性はあるか
  • 年収・ポジションを上げるタイミングはいつか

を定期的に確認しておくことが重要です。

転職を急がなくても、情報収集は早い方がいい

製薬業界の好条件求人は、公開される前にエージェント経由で動くことも少なくありません。 特にバイオベンチャー、希少疾患、オンコロジー、KAM、MSL候補の求人は、タイミングが非常に重要です。

「今すぐ転職するつもりはない」という段階でも、自分の市場価値を知っておくことは、今後のキャリア戦略に大きく役立ちます。

アストラゼネカのような大手外資が再成長フェーズに入る一方で、バイオベンチャーやスペシャリティファーマも日本市場で存在感を高めています。

ジェイエイシーリクルートメント

MRとして次のステージを狙うなら、業界の変化を「ニュース」として読むだけでなく、自分のキャリアにどうつなげるかまで考えることが大切です。

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