高額医療費の「真の原因」はどこにあるのか? 〜オプジーボ・キムリアは本当に戦犯なのか〜
政府が進める**「高額療養費制度の自己負担引き上げ」**に関して、石破首相(仮)が「オプジーボ」や「キムリア」を例に挙げ、医療財政の圧迫を指摘しました。しかし、この発言に対し、多くの患者や医療関係者から「必要不可欠な薬を名指しするのは患者を傷つける」と批判の声が上がっています。
本当に医療財政を圧迫しているのは、これらの画期的な新薬なのでしょうか?
あるいは、他にもっと無駄な医療費が存在しているのでしょうか?
本記事では、データとエビデンスを基に「医療費高騰の真の原因」に迫りながら、オプジーボやキムリアの意義、そして削減すべき医療費の問題点について考察していきます。
1. オプジーボ・キムリアは本当に医療財政を圧迫しているのか?
政府の発言を正当化するために、よく引き合いに出されるのが、オプジーボ(免疫チェックポイント阻害薬)やキムリア(CAR-T細胞療法)などの超高額医薬品です。
▶ オプジーボの価格と医療費への影響
オプジーボは、かつて100mgあたり73万円という高額な薬剤でしたが、使用拡大に伴い価格が大幅に引き下げられ、**現在は100mgあたり約3.6万円(2023年薬価改定後)**となっています。ピーク時の薬剤費の影響は確かに大きかったものの、現在は当初の20分の1以下の価格に抑えられています。
▶ キムリアの価格と費用対効果
キムリアは1回の治療で約3,400万円と驚くべき価格ですが、従来の治療法では治らなかった白血病・リンパ腫の患者が完治する可能性があるという点で、長期的に見れば医療費削減に貢献する可能性もあります。
厚生労働省の試算によると、キムリアを使用する患者数は年間数百人程度。つまり、日本の年間医療費約47兆円(2023年)における影響は極めて限定的なのです。
それでは、なぜ「医療財政を圧迫している」という話になってしまうのでしょうか?
2. 本当に削減すべき無駄な医療費とは?
▶ ① 湿布薬や軽微な薬の乱発処方
実は、湿布薬や市販薬でも買えるような薬の処方に莫大な医療費が使われています。
• 2022年度の調査によると、湿布薬の保険適用により約500億円の医療費が使われていた。
• 市販で買える風邪薬やビタミン剤の処方により、年間数千億円規模の保険財源が浪費されている。
「オプジーボが高い」よりも、「湿布代に税金を使っている」ことのほうが問題ではないでしょうか?
▶ ② 高齢者の過剰受診
日本では75歳以上の高齢者の1人あたり医療費が年間約97万円(2021年)と、現役世代の約4倍にもなっています。その大きな要因のひとつが**「過剰受診」**です。
• 風邪や軽い腰痛で毎日のように病院へ行く高齢者
• 「とりあえず検査しよう」と不要なCT・MRIが実施される(年間のCT・MRI件数は日本が世界一)
• 残薬(もらったが使わない薬)が年間500億円規模
こうした高齢者の**「無料だからとりあえず病院へ行く」文化こそが、医療費を圧迫している大きな要因**です。
▶ ③ 生活習慣病の予防不徹底
糖尿病や高血圧などの生活習慣病は、適切な予防をすれば重症化を防げる疾患ですが、日本の医療制度は「治療」にはお金をかけるが、「予防」にはほぼ投資されていないのが現状です。
• 糖尿病の合併症治療(透析)にかかる医療費は年間約1.5兆円
• 肥満関連疾患による医療費は年間3兆円超
食事・運動療法を徹底すれば削減できるはずの医療費が、膨れ上がっているのが実態です。
3. オプジーボ・キムリアの「本当の価値」
政府は「医療費が高騰する」と言いますが、オプジーボやキムリアのような薬は、多くの患者を救い、QOLを劇的に向上させていることを忘れてはいけません。
▶ ① オプジーボがもたらした「がん治療の革命」
• 免疫チェックポイント阻害剤の登場により、一部のがん患者では「完治」が期待できるようになった。
• 化学療法では治療困難だったがん(例:悪性黒色腫、肺がん)に劇的な効果を発揮。
• 免疫療法の進化により、今後さらに費用対効果の高い治療が可能に。
▶ ② キムリアによる「最後の希望」
• 従来の治療法では助からなかった血液がん患者が救われている。
• 1回の治療で完治する可能性があるため、長期的には医療費削減にも寄与。
• 「高額だから不要」と切り捨てるのではなく、価格調整をしつつ持続可能な制度設計を考えるべき。
4. 本当に削減すべきは「命を救う薬」なのか?
オプジーボやキムリアのような薬が財政を圧迫している、というのは本当に正しいのでしょうか?
• 本当に削るべきは、不要な湿布や市販薬の処方では?
• 本当に見直すべきは、高齢者の過剰受診では?
• 本当に対策すべきは、生活習慣病の予防では?
「高額な薬が悪」と単純に決めつけるのではなく、医療財政の本当の問題点を見極める議論が必要です。
大切なのは「医療の無駄」を無くし、本当に必要な医療を支えることではないでしょうか?
かいり。
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