ALS治療薬クアルソディ髄注発売! 〜治療はどう変わる? 既存薬との違いや担当MRのやりがい〜
2025年3月19日、バイオジェンの「クアルソディ髄注」 が薬価収載と同時に発売されました。
クアルソディは、日本で初めて遺伝的原因を標的とするALS治療薬 であり、SOD1遺伝子変異を有するALS(SOD1-ALS) に対する画期的な治療選択肢となります。
本記事では、
• ALS治療の現状と課題
• クアルソディの作用機序と既存薬との違い
• 治療現場の変化と今後の展望
• 担当MRのやりがいと今後の挑戦
について詳しく解説します。
ALSとは? 〜進行性の神経変性疾患〜
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動ニューロンが徐々に機能を失い、
• 筋力低下
• 嚥下障害
• 呼吸機能の低下
を引き起こす進行性の神経変性疾患です。
ALSの特徴は、発症から平均3〜5年で呼吸不全に至ることが多い という点であり、治療の選択肢が極めて限られている難病 です。
① ALSの分類とSOD1-ALSの位置付け
ALSは、大きく以下の2つに分類されます。
分類 特徴
孤発性ALS(sALS) 原因不明(ALS患者の約90%)
家族性ALS(fALS) 遺伝的要因あり(ALS患者の約10%)
家族性ALSのうち、SOD1遺伝子変異を持つSOD1-ALSは、ALS全体の約2%を占める とされます。
クアルソディ髄注とは? 〜日本初の遺伝型ALS治療薬〜
① クアルソディの基本情報
製品名 一般名 メーカー 投与方法 効能・効果 薬価
クアルソディ髄注 トフェルセン バイオジェン 髄腔内投与(1〜3分間) SOD1遺伝子変異を有するALS(SOD1-ALS) 100mg 15mL 278万8883円
② 作用機序 〜アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)とは?〜
クアルソディはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO) に分類される薬剤です。
• SOD1mRNAに結合し、SOD1タンパク質の産生を抑制
• 異常なSOD1タンパク質の蓄積を防ぎ、運動ニューロンのダメージを軽減
つまり、根本的な遺伝的原因にアプローチするALS治療薬 という点が、従来の治療薬とは大きく異なります。
既存ALS治療薬との違い 〜クアルソディは何が新しいのか?〜
① 既存のALS治療薬一覧
現在、日本で使用されているALS治療薬には以下のようなものがあります。
製品名 一般名 作用機序 投与方法
リルゾール リルゾール グルタミン酸神経毒性抑制 経口(1日2回)
ラジカット エダラボン 酸化ストレス抑制 静脈注射(10日間投与→14日休薬のサイクル)
ラジカット(経口) エダラボン 酸化ストレス抑制 経口(1日1回)
クアルソディ トフェルセン SOD1mRNAを標的 髄腔内投与(4週間ごと)
② クアルソディの新規性
• 遺伝的原因に直接アプローチする初のALS治療薬
• SOD1遺伝子変異を有する患者に対し、病態の進行を抑制する可能性
• 根本治療に近いアプローチをする新しい選択肢
ただし、クアルソディはSOD1-ALSのみに適応があるため、すべてのALS患者が対象ではない ことに注意が必要です。
ALS治療はどう変わる?
① 遺伝子検査の普及が鍵に
クアルソディの適応患者は、SOD1遺伝子変異があるALS患者のみ です。
そのため、
• 遺伝子検査の普及
• 早期診断の体制整備
が治療の鍵を握ることになります。
バイオジェンも「遺伝子検査の浸透を促進し、適切な患者が治療を受けられる体制を構築する」とコメントしており、製薬会社と医療機関が連携して診断精度を向上させることが不可欠 となります。
② 高額薬剤の費用負担とアクセスの課題
クアルソディの薬価は100mg 15mLで278万8883円 という非常に高額な設定になっています。
そのため、
• 保険適用の可否
• 患者負担の軽減策
• 医療機関での使用体制の整備
といった経済的・制度的な側面も、今後の普及を左右する重要なポイントとなるでしょう。
担当MRのやりがい 〜ALS領域のMRとして挑むべきこと〜
クアルソディの発売により、ALS治療領域のMRには新たな役割とやりがいが生まれます。
① 医師への情報提供の重要性
• SOD1-ALSとクアルソディの特性を正しく伝える
• 遺伝子検査の必要性を啓発し、検査普及を促す
• 適切な患者に治療が届くよう、診療フローを支援する
② 医療経済的な視点を持つ
• 高額薬剤であるため、医療機関の経済的負担や保険適用の課題を理解する
• 患者負担軽減策を医療機関と連携して検討する
③ ALSという難治性疾患に向き合う覚悟
ALSは、未だ治療が確立されていない疾患の一つです。
その中で、根本治療に近づく新薬を届けるMRの役割は非常に重要 です。
「ALSに苦しむ患者に、一日でも早く新たな希望を届けたい」
そんな使命感を持って、この領域に挑む価値は大いにあるでしょう。
クアルソディの登場は、ALS治療の新たな一歩となるのか?
今後の展開に注目しつつ、MRとしての役割を果たしていきたいですね。
かいり。
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