MRから起業・副業へ──「転職エージェント/エージェントサポート」という新しいキャリアの選択肢
「MRとしての経験を活かして、もう一つの収入源をつくりたい」
「いつかは起業したいけれど、いきなり独立は不安…」
そんな製薬企業MRにとって、転職エージェント/エージェントサポートは、実はかなり相性の良いビジネスモデルです。
特に、製薬・バイオ・メディカル領域に特化した独立系エージェントは、参入障壁が意外と低く、利益率が高く、ニッチ市場で戦える「隠れた本命」です。
この記事のゴール
本記事では、現役MRの方が、
- ① 副業としてエージェントサポートを始めるパターン
- ② 将来の独立を見据えて、ひとり転職エージェントとして起業するパターン
の2つをイメージしやすいように、仕組み・稼ぎ方・始め方・注意点までをまとめて解説します。
なぜMRと「転職エージェント/エージェントサポート」は相性が良いのか
1. 業界知識とネットワークがそのまま武器になる
- 製薬企業ごとのカルチャー・年収レンジ・評価制度を知っている
- 担当施設や学会を通じて、MR・MSL・MA・開発・安全性など多職種のリアルに触れている
- 「どの会社がどの領域を伸ばしているか」、「どのパイプラインが厚いか」などの情報が頭に入っている
これらは、一般的な総合型エージェントにはなかなか真似できない強みです。
2. 「MR×キャリア相談」というポジションが取りやすい
現役MRや医療系職種は、転職サイトからの大量メールには慣れており、
「業界をわかっていないエージェント」に対して警戒心を持っています。
そこで、
- 「製薬業界で◯年MRをやってきた立場から、リアルなキャリアの話ができます」
- 「オンコロジー/希少疾患/バイオベンチャーに特化したキャリア相談です」
というポジショニングを取ると、一気に信頼度が上がるのがこの領域の特徴です。
3. 高単価・高粗利のビジネスモデル
人材紹介ビジネスの一般的な報酬モデルは、
- 紹介先企業からの成功報酬:候補者の年収の25〜35%
製薬業界では年収レンジが高いため、たとえば、
- MR(年収800〜900万円) ⇒ 成功報酬 約200〜270万円
- MSL・MA(年収900〜1,200万円) ⇒ 成功報酬 約270〜360万円
となり、1件の決定で数百万円の売上になることも少なくありません。
しかも、独立系やエージェントサポートの場合、固定費がほとんどかからず、利益率が非常に高いのが特徴です。
ビジネスモデルを理解する:独立系エージェント/エージェントサポートとは?
1. 独立系転職エージェントのイメージ
「ひとり人材紹介会社」のようなイメージで、
- 候補者と面談する
- 企業の求人をヒアリングする
- マッチする人材を紹介する
という流れは大手紹介会社と同じです。
違うのは、大手会社の看板がない代わりに、自由度と利益率が高いこと。
2. エージェントサポート(業務委託)のイメージ
「いきなり独立は怖い」という場合は、エージェントの業務委託・サポートという形から入るのも現実的です。
- 候補者集客だけを担当して紹介料を分配
- 一次面談を代行して、決定時にフィーの一部を受け取る
- 特定領域(例:オンコロジーMR)のみを紹介する“専門パートナー”として関わる
イメージとしては、「MRとして本業を続けながら、副業としてキャリア面談担当になる」ような働き方です。
MRから見た「メリット」と「デメリット」を整理する
メリット
- 業界経験をそのまま活かせる(ゼロからの勉強ではない)
- 在宅・オンラインで完結するため、家庭や本業との両立がしやすい
- 成果に応じて収入の上限がかなり高い
- 転職市場の「内情」を知れるので、自分自身のキャリア戦略にも役立つ
- 将来的に「独立コンサル」「講師」「キャリア講演」などへ展開させやすい
デメリット・注意点
- 成果が出るまでタイムラグがある(候補者との面談→選考→内定→入社→入金まで数ヶ月)
- 景気や採用トレンドに影響を受ける
- 企業・候補者とのやり取りが増えるため、時間管理が重要
- 副業の場合は、勤務先の就業規則の確認が必須
収益イメージ:どれくらい稼げるのか?
1. 月1件の決定でどうなる?
例えば、年収800万円のMRが転職したケースを考えると、
- 成功報酬30%とすると ⇒ 240万円の売上
独立系なら、そこから引かれるのは、
- サーバー代、ツール代など:月数千〜数万円
程度のため、粗利率は90%以上になります。
2. 副業レベルでの現実的な目安
- 2〜3ヶ月に1件の決定:月換算で50〜150万円
- 半年に1件でも:「ボーナス級」の収入としてインパクト大
もちろん、最初からコンスタントに決定できるわけではありませんが、
MRとしてのネットワークと専門性を活用できれば、一般的な副業と比べて単価が圧倒的に高いのが、このモデルの魅力です。
STEP別:MRがエージェント/エージェントサポートを始めるまでのロードマップ
STEP1:就業規則の確認・リスク整理
- 副業禁止かどうか
- 競業避止義務(医療・医薬関連ビジネスがNGかどうか)
- 情報漏洩・守秘義務のライン
ここは必ず押さえた上で、「あくまで業界知識と公開情報をベースに動く」というスタンスが重要です。
STEP2:自分の「得意領域」を決める
例としては、
- オンコロジーMR特化
- 希少疾患/バイオベンチャー特化
- MSL・MAなどメディカル部門へのキャリアチェンジ特化
- エリア特化(首都圏/関西/地方中核都市など)
「誰のどんなキャリアを支援するのか?」を明確にするほど、候補者も企業も集まりやすくなります。
STEP3:情報発信の母艦を作る(ブログ・SNS)
おすすめは、
- ブログ(WordPressなど):検索経由でMR・医療職が自然に集まる
- X(旧Twitter):リアルタイムで業界ネタや採用動向を発信
- LinkedIn:グローバルな製薬・バイオ企業の採用担当とつながりやすい
最初は、
- 「オンコロジーMRのキャリアパス」
- 「バイオベンチャーへの転職のリアル」
- 「MRからMSLへのキャリアチェンジ」
といった“悩みベース”の記事や投稿から始めるのがおすすめです。
STEP4:エージェントサポートとして参画する
いきなり自前で企業開拓・契約まで行うのが不安な場合は、
- 製薬・医療専門の転職エージェントに「業務委託」で参画する
- 候補者の集客・面談のみを行い、決定時に報酬をシェアしてもらう
といった形からスタートするのが現実的です。
この段階では、
- 候補者との面談スキル
- キャリアの棚卸し・志向整理の方法
- 面接対策のポイント
を実地で学びながら、「自分なりのスタイル」を固めていきます。
STEP5:将来の独立を見据えた準備
副業としてエージェントサポートの経験を積みつつ、
- 候補者からの相談ルートを自分のメディアに集約していく
- 少しずつ企業側との直接の接点(採用担当・部門長)を増やす
- 「◯◯領域の人材ならこの人に相談しよう」というポジションを築く
と、独立したタイミングで一気にビジネスを立ち上げやすくなります。
独立系としてやっていく場合のポイント
1. 「数字」より「専門性」と「信頼」が命
大手エージェントのように、
「今月◯件決定」「毎月新規◯人面談」
といった追い方をすると、ひとりビジネスではすぐに疲弊します。
独立系の強みは、
- 知っている領域で、分かる人だけを相手にする
- 中長期的な関係性を前提に候補者と向き合う
ことにあります。
2. 情報の扱いには徹底して慎重に
- 現職の企業名・内部情報の扱い
- 候補者の個人情報管理
- 本業先と競合するような動きになっていないか
など、「信頼ビジネス」であることを常に意識することが大事です。
3. 「やりたい人」だけをサポートする贅沢さ
独立系の良さは、自分が本当に応援したい人たちだけを支援できることです。
- 本気でキャリアを変えたいMR
- バイオベンチャーに挑戦したい人
- MSLになって、エビデンスベースで医療に関わりたい人
といった「コアなターゲット」に集中するほど、
紹介の質・決定率・満足度が上がり、結果的に収入も安定しやすくなります。
MRからの起業・副業としてのエージェントは「かなり現実的」な選択肢
MRとして数字に追われる毎日の中で、
「このまま定年までMRで走り切るのか?」
と不安になる瞬間は、多くの人に訪れます。
そんなとき、
- 本業で培った業界知識とネットワークを活かしつつ
- 在宅・オンライン中心で進められて
- うまく軌道に乗れば月数十万〜数百万円のポテンシャルがある
「転職エージェント/エージェントサポート」は、
MRならではの“第二のキャリア”として非常に相性の良いフィールドです。
最後に:まずは“小さく始めて”感覚をつかむ
いきなり会社を辞めて独立する必要はありません。
むしろ、
- ブログやSNSで、「製薬キャリア」の情報発信を始める
- 知り合いMRのキャリア相談に乗ってみる
- エージェントサポートという形で、副業として小さく関わってみる
といったところから、
「自分にとってしっくりくるスタイル」を少しずつ探っていくのが現実的です。
MRとしての経験を持つあなたには、
すでに「エージェント/キャリアアドバイザーとして戦えるだけの武器」が揃っています。
あとは、一歩目をどこから踏み出すかだけです。
この記事が、MRからの起業・副業という新しい選択肢を考えるきっかけになれば嬉しいです。


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