SGLT2、そしてアイリーアが犠牲に!!
拡大再算定制度の功罪を考える!
こんにちは、バイオベンチャーMRかいりです。
今回は、2025年薬価改定において再び話題となった「拡大再算定制度」と、それに巻き込まれた薬剤たちについて深掘りしていきます。
「なぜ売れた薬が叩き落とされるのか?」「MRにとって、企業にとって、この制度は本当に正しいのか?」
SGLT2阻害薬やアイリーアといった“被害者”を例に、拡大再算定制度の功罪を面白く、鋭く、刺激的に論じていきます!
拡大再算定制度とは?共連れ再算定って何?
まず、制度の基本をおさらいしておきましょう。
- 拡大再算定:薬価収載時の予想を超えて売れた薬剤に対して、薬価を強制的に引き下げる制度。
- 共連れ再算定:基準薬が薬価引き下げ対象になった場合、それに依存する後発品やバイオシミラー、関連品目も自動的に値下げされる制度。
つまり、「売れれば売れるほどペナルティを食らう」という、製薬企業にとっては一種の“成功罰”とも言える仕組みです。
今回のターゲット:SGLT2阻害薬とアイリーア
【1】SGLT2阻害薬(ジャディアンス、フォシーガなど)
もともとは糖尿病治療薬として登場したSGLT2阻害薬。しかし、心不全・慢性腎臓病(CKD)への適応拡大が追い風となり、処方が爆発的に増加しました。
2024年度のSGLT2阻害薬クラス全体での国内売上は、1,200億円以上とも推定され、心不全治療の新しい標準となった背景があります。
その結果…見事に拡大再算定の対象となりました。
【2】アイリーア(抗VEGF抗体:眼科領域)
加齢黄斑変性や糖尿病網膜症といった網膜疾患に対して圧倒的シェアを誇ってきた抗VEGF製剤「アイリーア」。
近年、用量変更(8週投与→12週投与など)により患者・医師双方にメリットが生まれたこともあり、使用量が安定的に拡大。2024年には国内売上高は1,100億円規模に。
こちらも当然、拡大再算定+共連れ再算定に巻き込まれ、大幅な薬価ダウンへと追い込まれました。
過去の“被害者”たち:オプジーボが受けた洗礼
「拡大再算定制度」を語る上で、避けて通れないのがオプジーボの伝説です。
2014年に登場し、初期薬価はなんと1人年間3,500万円!
適応拡大に伴い使用量が急増し、「このままでは医療財政が破綻する」との危機感から、2017年に薬価が50%ダウン、さらにその翌年も50%ダウンという、異例の連続再算定が実施。
この“オプジーボ・ショック”をきっかけに、制度そのものが厳格化されていきました。
制度の功罪:メリット・デメリットを徹底考察!
【メリット】
- 医療費の抑制:高額薬剤による医療財政の逼迫を防ぐ。
- 過剰な利益の是正:企業の不当な利潤取得を抑える。
- 保険制度の公平性の維持:高額薬に頼りすぎない医療提供を促す。
【デメリット】
- 企業のモチベーション低下:「売れたら薬価下がる」→開発意欲が損なわれる。
- 海外勢の撤退リスク:グローバルに展開する企業が「日本は収益性が低い」と判断。
- 新薬開発力の低下:再算定の恐怖から、画期的医薬品の投入が遅れる可能性も。
事実、近年は国内市場での新薬投入を後回しにする企業が増加しており、日本だけ“医療後進国”化するリスクも懸念されています。
MR・投資家の目線で考える「拡大再算定制度」
【MRにとって】
拡大再算定制度は、売上増=評価向上という従来のインセンティブ構造を揺るがします。
さらに、薬価が下がれば施設・医師からの関心も薄れる可能性があり、モチベーション維持が困難になる場面も。
ただし、こうした状況だからこそ、「薬の価値」をどう伝えるかが問われる時代。
真に臨床的価値を訴求できるMRこそが生き残るフェーズに突入したとも言えるでしょう。
【投資家にとって】
薬価政策は、製薬企業の売上・利益に直接インパクトを与えるため、制度動向は最重要のリスクファクターです。
再算定対象となった企業の株価は往々にしてネガティブに反応します。
しかし、同時に「薬価下げを織り込んでなお成長できる企業」が真の投資先としての強さを持っているとも言えます。
まとめ:薬価制度の見直しは必要か?
今回のSGLT2阻害薬、アイリーアのケースを見ても、「拡大再算定」は医療財政を守る盾でありつつ、イノベーションを奪う矛にもなり得ます。
売れたから叩かれるのではなく、「正当に価値を認めて評価する」制度への見直しが必要なタイミングかもしれません。
MRの皆さん、投資家の皆さん。
この制度の行方は、私たちのキャリアにも、資産にも、深く関わってきます。
次に犠牲になるのは、あなたが愛する薬かもしれません。
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