イーライリリー2025年第三四半期決算を徹底解説!急成長の裏側と今後の展望
イーライリリー2025年第三四半期決算を徹底解説!
急成長の裏側と今後の展望
世界で最も勢いのある製薬企業。 2025年Q3決算でイーライリリーは、肥満・糖尿病領域を中心に再び市場を驚かせました。 売上・利益ともに史上最高水準を更新し、同社の「成長エンジン」がいかに強固かを証明した四半期となりました。
1.2025年第3四半期決算ハイライト
イーライリリーの2025年7〜9月期決算は、まさに「肥満薬の爆発的ブーム」を象徴する内容でした。
| 項目 | 2024年Q3 | 2025年Q3 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 92億ドル | 132億ドル | +43% |
| 純利益 | 24億ドル | 41億ドル | +70% |
| 調整後EPS | 2.21ドル | 3.78ドル | +71% |
| 営業利益率 | 32.5% | 37.9% | +5.4pt |
同社の成長は、単なる「一製品の成功」ではなく、 Mounjaro(マンジャロ)・Zepbound・Verzenioなど複数の柱による多重成長モデルが背景にあります。 研究開発費も前年同期比+28%と高水準を維持しており、攻めの姿勢は一切緩んでいません。
2.成長をけん引する“3つの主役”
- Mounjaro(チルゼパチド):売上54億ドル(+85%)。2型糖尿病に加え、肥満症での使用が爆発的に拡大。供給能力増強も追い風。
- Zepbound(同成分・肥満症):売上17億ドル。市場投入から1年足らずで医薬史に残るスピードで成長。
- Verzenio(乳がん):売上13億ドル(+27%)。アドジュバント療法で適応拡大中。
これらの製品が全体売上の約65%を占めており、まさに「リリーの黄金期」と呼ぶにふさわしい構成比となっています。
3.その他主要製品・地域動向
- Jardiance(糖尿病):売上12億ドル(+9%)。心腎領域への広がりで堅調。
- Taltz(乾癬):売上9億ドル(+6%)。成熟市場ながら安定成長。
- Emgality(片頭痛):売上4.8億ドル(+10%)。中枢神経領域の重要ポジションを維持。
地域別では、米国売上が全体の70%を超え、欧州・日本も供給改善で追随。 生産能力のボトルネック解消が今後のテーマとして挙げられています。
4.パイプラインの拡大:肥満×中枢×自己免疫へ
リリーは今や「肥満薬メーカー」ではありません。 2025年のR&D説明会では、以下のような新領域への布石が明らかになりました。
- レプチン系肥満薬(Orforglipron):経口型のGLP-1受容体作動薬。2026年承認を見込む。
- アルツハイマー病(Donanemab):FDA承認を取得し、世界展開を加速中。
- 自己免疫(Mirikizumab):潰瘍性大腸炎・クローン病で拡大予定。
同社はAI創薬やバイオ製造にも巨額投資を進めており、研究・供給・販売のすべてで“次世代型製薬企業”としての体制を完成させつつあります。
5.株価・市場評価:時価総額世界1位の理由
2025年10月時点で、イーライリリーの時価総額は約8,000億ドル。 製薬業界どころか、世界の上場企業でもトップ5に入る規模です。
市場が評価しているのは、単なる業績ではなく「未来への信頼」です。
- 肥満・糖尿病の“社会課題”に真っ向から挑む製品群
- 製造・サプライチェーンを自前で拡張する経営力
- AI創薬・臨床最適化など新技術への圧倒的投資スピード
一方で、株価は高PER水準(約70倍)と割高感も意識されており、 「業績が想定を上回り続けられるか」が今後の焦点です。
6.MR・製薬業界人が注目すべきポイント
リリーの成功は「営業力の勝利」でもあります。
- 肥満薬・糖尿病領域では、医師向け情報提供とデジタル啓発を完全に統合。
- 自己注射・経口薬の両面で「患者の選択肢」を訴求し、ブランド価値を高めた。
- MRの役割は「販促」から「医療パートナー」へと進化中。
日本法人でも肥満・糖尿病・神経領域での採用が活発化しており、 MR・MA・マーケティング職にとってキャリアアップの好機となっています。
7.まとめ:イーライリリーが創る「新しい医薬の時代」
糖尿病薬のメーカーから、肥満・中枢・免疫を制する総合バイオ企業へ。 イーライリリーの進化は、製薬業界そのものの変革を象徴しています。
この3年で売上は倍増、利益は3倍。研究開発も新時代の医療課題に的確に投資。 「人と健康の未来を変える」という理念が、もはやスローガンではなく現実になりつつあります。
2026年に向け、リリーは“人類の肥満を治療できる企業”という歴史的役割を果たすかもしれません。
出典:イーライリリー2025年第3四半期決算資料、決算説明会コメントなどを基に再構成。


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