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「第一三共でも、MRが早期退職の対象になるのか」
今回のニュースを見て、製薬業界で働くMRの中には驚いた方も多いのではないでしょうか。
第一三共が、国内の医薬営業本部を対象とするキャリア転進施策を実施すると報じられました。
報道ではMRが中心になるとみられており、しかも前年に続いて2年連続となります。
製薬業界では今、
「会社が成長しているか」
と
「自分のポジションが将来も必要とされるか」
が、別の問題になり始めています。
そしてこの変化は、第一三共のMRだけに関係する話ではありません。
大手内資。
外資系製薬。
バイオベンチャー。
プライマリー。
スペシャリティ。
オンコロジー。
どこに所属していても、MR自身が理解しておくべき「Commercial組織の構造変化」があります。
- 第一三共の早期退職で最も重要なのは「会社の業績が悪いわけではない」こと
- なぜ会社が成長しているのにMR組織を見直すのか?
- 第一三共の数字を見ると「会社」と「国内MR」の違いが見えてくる
- MRが見るべきなのは「会社の成長率」ではなく、自分のいる場所
- 「MRが減る」と「MR求人がなくなる」は同じではない
- 40代MRが特に注意したい「年収」と「市場価値」のズレ
- では、これから市場価値が上がりやすいMRとは?
- 職務経歴書も「売上実績」だけでは弱くなる
- 早期退職が発表されてから「自分の市場価値」を調べる必要はない
- 転職エージェントは「求人を紹介してもらう場所」だけではない
- MR転職で使い分けたい3つの情報ルート
- 「早期退職がある会社=辞めるべき会社」ではない
- まとめ|第一三共のニュースを「他社の話」で終わらせない
第一三共の早期退職で最も重要なのは「会社の業績が悪いわけではない」こと
まず押さえておきたいのがここです。
今回の動きを、単純に
「業績が悪いから人員削減をしている」
と理解すると、本質を見誤ります。
第一三共は現在、世界のオンコロジー市場で急速に存在感を高めています。
2025年度の連結売上収益は2兆1,230億円。
コア営業利益は3,889億円。
さらに海外売上比率は72.7%まで上昇しています。
その成長を牽引しているのが、エンハーツを中心とするDXd ADCです。
2025年度のエンハーツの売上収益は8,195億円。
ダトロウェイも561億円まで拡大しています。
売上収益:2兆1,230億円
コア営業利益:3,889億円
海外売上比率:72.7%
エンハーツ売上収益:8,195億円
ダトロウェイ売上収益:561億円
さらに第6期中期経営計画では、2030年度に
売上収益3兆円以上
そして、
がん領域売上収益2兆3,000億円以上
という目標を掲げています。
つまり今回のニュースから学ぶべきなのは、
なぜ会社が成長しているのにMR組織を見直すのか?
ここから少し専門的に考えてみます。
製薬企業の営業組織を考える際には、単純な売上高ではなく、少なくとも次の4つを見る必要があります。
① Product Portfolio
どの製品が今後の売上を作るのか。
プライマリー中心なのか。
Specialtyなのか。
Oncologyなのか。
Rare Diseaseなのか。
会社の主力製品が変われば、必要になるMRのCapabilityも変わります。
② Patent Cliff
大型製品の特許満了は、営業組織に大きな影響を与えます。
売上規模の大きい成熟製品を、多人数のMRでカバーするモデルから、より少人数・高専門性の営業モデルへ移行することも考えられます。
③ Customer Structure
昔のMR活動では、地域の多数のクリニックを訪問するモデルが大きな役割を持っていました。
しかしSpecialty領域では状況が違います。
患者が大学病院や基幹病院へ集約される。
意思決定に複数の医師が関わる。
薬剤部、看護師、地域連携、病院経営などのStakeholderが増える。
すると重要になるのは、
「何軒訪問できるMRか」
ではなく、
「複雑なAccountを動かせるMRか」
になっていきます。
④ Commercial Productivity
Digital、Remote、AIなどが営業活動に入ってくるほど、情報提供そのものの希少性は低下します。
製品情報を説明する。
論文を探す。
競合データを比較する。
資料を要約する。
こうした業務は、今後さらに効率化されていくでしょう。
すると企業側は、
「この人数のMRを配置することで、どれだけ市場を動かせるのか」
を見るようになります。
第一三共の数字を見ると「会社」と「国内MR」の違いが見えてくる
もう一つ興味深い数字があります。
第一三共の地域別売上収益を見ると、2022年度には日本が41.7%を占めていました。
それが2025年度には27.3%まで低下しています。
一方、海外は72.7%です。
| 年度 | 日本 | 海外 |
|---|---|---|
| 2022年度 | 41.7% | 58.3% |
| 2023年度 | 37.5% | 62.5% |
| 2024年度 | 31.0% | 69.0% |
| 2025年度 | 27.3% | 72.7% |
これは非常に象徴的です。
会社全体としては成長している。
しかし、その成長の中心はGlobal Oncologyへ移っている。
ここから、すべての国内MRポジションが縮小すると結論づけることはできません。
ただしMRが自分のキャリアを考える際、
「会社全体が伸びているから大丈夫」
だけでは不十分であることは分かります。
MRが見るべきなのは「会社の成長率」ではなく、自分のいる場所
ここは転職を考えていないMRにもぜひ考えてほしいところです。
会社のIR資料を見る時、
売上。
営業利益。
株価。
Pipeline。
だけを見るのではありません。
MRなら、もう一段深く見ます。
自分の担当製品は3年後にも会社の重点製品なのか?
自分の担当Customerは、会社が今後投資するAccountなのか?
自分の持っているSkillは、次のPortfolioでも必要なのか?
この4つです。
「MRが減る」と「MR求人がなくなる」は同じではない
製薬業界ではMR数の減少が長期的に続いています。
しかし同時に、採用活動を行う製薬企業もあります。
この2つは矛盾していません。
重要なのは、
と考えることです。
成熟製品中心の組織では人員を最適化する。
一方で、
新薬Launch。
Rare Disease。
Oncology。
Hematology。
Immunology。
Neurology。
新規参入企業。
新組織立ち上げ。
こうした領域では、新しい人材が必要になります。
つまり、これからのMR転職市場で重要になるのは、
「MR経験年数」
よりも、
「どんなCareer Assetを持っているMRなのか」
です。
40代MRが特に注意したい「年収」と「市場価値」のズレ
大手製薬企業に長く勤務すると、給与水準は高くなりやすい。
これは大きなメリットです。
しかし40代以降になると、一つ注意したいことがあります。
現在の年収=転職市場での市場価値
とは限らないことです。
例えば現在年収1,200万円でも、外部市場で同条件を提示する企業がほとんどなければ、その年収は「社内価値」の影響を強く受けている可能性があります。
逆に現在年収900万円でも、
Rare Disease。
Launch。
大学病院。
KOL。
KAM。
People Management。
など希少な経験を持っていれば、外部市場でより高い評価を得られる可能性があります。
高い年収をもらっている間に、社外で通用するCareer Assetが増えていない状態です。
では、これから市場価値が上がりやすいMRとは?
私なら、今後のMRキャリアでは次の7つを意識します。
| Career Asset | 何を意味するか |
|---|---|
| Specialty | Oncology、Rare Disease、Neurology、Immunology、Hematologyなど専門性 |
| Launch | 新薬上市前後の市場形成経験 |
| University Hospital | 大学病院・基幹病院など複雑なAccount経験 |
| KOL | 重要顧客との戦略的な関係構築経験 |
| Account Management | 医師だけでなく複数Stakeholderを含めたAccount設計 |
| Cross-functional | Marketing、Medical、Market Accessなどとの協働 |
| Leadership | Managerでなくても人・Project・市場を動かした経験 |
大切なのは、全部を持つことではありません。
「自分は何のAssetで勝負するMRなのか」
を説明できることです。
職務経歴書も「売上実績」だけでは弱くなる
例えば、
「全国売上3位」
「達成率120%」
「社長賞受賞」
もちろん素晴らしい実績です。
ただ、転職市場でさらに重要になるのは、
「なぜその成果を出せたのか」
です。
私はMRの実績を、
Situation → Problem → Action → Result → Reproducibility
まで分解しておくことをおすすめします。
特に最後のReproducibility=再現性。
ここまで説明できると、
「今の会社で売れたMR」
から、
「次の会社でも成果を出せるMR」
へ変わります。
早期退職が発表されてから「自分の市場価値」を調べる必要はない
ここで一つ、転職エージェントの使い方についても触れておきます。
転職エージェントに登録することと、転職することは同じではありません。
むしろ私は、
「今すぐ転職するつもりがない時」
にも外部市場を確認しておく価値があると思っています。
確認するのは、求人そのものだけではありません。
・現在の市場年収はいくらなのか
・OncologyやRare Diseaseへ移れるのか
・KAM候補として評価されるのか
・Manager候補として評価されるのか
・今後どんな経験を積めば市場価値が上がるのか
これを知ってから、
「やっぱり今の会社に残る」
でも構いません。
市場を知らずに残ることと、
市場を確認したうえで残ることは、
同じ「残留」でも意味がまったく違います。
特に30代後半〜40代のMRは、「求人が出てから転職活動を始める」のではなく、転職しない時期から市場情報を取っておくことが重要です。
外資系製薬、Specialty、管理職、KAMなども含めてキャリアの選択肢を確認したい場合は、ハイクラス領域に強い転職エージェントから情報を取っておく方法があります。
JAC Career※登録したからといって、必ず転職する必要はありません。まずは自分の現在地と選択肢を確認する目的でも活用できます。
転職エージェントは「求人を紹介してもらう場所」だけではない
私は転職エージェントを、単なる求人紹介サービスとして見るともったいないと思っています。
MRにとって価値があるのは、
自分の会社の外側にある市場情報を得られること。
例えば自社では、
「この経験は普通」
と思っていたものが、他社では希少な場合があります。
逆に、
「大手製薬で長年働いているから市場価値は高い」
と思っていても、外部市場ではSpecialty経験を求められる場合もあります。
だから私は、可能であれば1社だけではなく、複数の視点から情報を取ることをおすすめします。
MR転職で使い分けたい3つの情報ルート
① JAC Recruitment
外資系製薬、ハイクラス、管理職、KAMなどを視野に入れる場合に確認しておきたい選択肢です。
JAC Career② Randstad
MR・製薬業界の求人を幅広く確認し、「今どの領域・地域で採用が動いているのか」を見る際の選択肢です。
RandstadでMR・製薬業界の求人を確認する③ en world
外資系・グローバル企業を中心に、自分のキャリアの選択肢を確認したい場合の情報源として活用できます。
en worldで外資系・グローバル企業の求人を確認する「早期退職がある会社=辞めるべき会社」ではない
最後に、ここは強調しておきたいと思います。
早期退職制度がある。
だから転職した方がいい。
これはあまりにも単純です。
大手製薬企業に残ることで、
大学病院。
新薬Launch。
Oncology。
Global Project。
Leadership。
社内異動。
などのCareer Assetを積める可能性もあります。
場合によっては、転職するよりも今の会社に残った方が市場価値を高められることもあります。
だから重要なのは、
まとめ|第一三共のニュースを「他社の話」で終わらせない
今回の第一三共のニュースは、第一三共MRだけの問題ではありません。
製薬企業のBusiness Portfolioは変わります。
主力製品も変わります。
Patent Cliffも来ます。
M&Aもあります。
新薬の成功・失敗もあります。
そしてCommercial Modelも変わります。
会社には会社のStrategyがあります。
しかし、会社はあなたの人生に最適なタイミングで組織改革をしてくれるわけではありません。
だからこそ、MR自身も自分のCareer Strategyを持っておく必要があります。
転職する必要はありません。
今の会社が好きなら残っていい。
ただし、
「残るしかないMR」
ではなく、
「転職することもできるけれど、自分で残ることを選んでいるMR」
でいる。
私は、その状態がこれからの製薬業界では非常に強いと思っています。
① 自分の職務経歴書を開く
② 3年間で増えたCareer Assetを書き出す
③ 現在の市場年収を確認する
④ 自分が応募できる求人を3件だけ見る
⑤ 「3年後も今の会社にいたいか」を考える
転職するかどうかを決める必要はありません。
まず「自分にはどんな選択肢があるのか」を知るところからで十分です。
早期退職が発表されてから慌てて求人を探すのではなく、何も起きていない時から自分の市場価値を把握しておく。
外資系製薬・Specialty・KAM・管理職などを含め、自分の3年後の選択肢を確認するなら、複数の転職エージェントから市場情報を取って比較する方法もあります。
今すぐ転職するためではなく、「転職できる状態」を作るために市場を見る。
これが、変化の大きい製薬業界で自分のCareerを守る一つの方法だと思います。
JAC CareerRandstadでMR・製薬業界の求人を確認する
※本記事は2026年9月30日時点の公開情報および報道をもとに、製薬業界・MRキャリアの観点から筆者が考察したものです。第一三共の個別の人員施策、将来の組織変更、個人の雇用等について推測・断定するものではありません。転職・退職等の意思決定は、ご自身の状況や正式な企業情報等をご確認のうえ判断してください。

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